モラルハザード

モラルハザード(moralhazard)は、もともとは保険業界の用語です。
保険に加入し、危険回避のためのセーフティーネットが整ったことによって、保険加入者が果たすべき注意義務を怠ったり、故意に事故を起こしたりして、かえって危険や事故の発生リスクが高まるような傾向を指します。

モラルハザードを防止するための手法としては、自動車保険においては例えば「保険等級の制度」があります。
保険期間中に事故を起こさなければ、次回の保険料が安くなり、事故を起こせば保険料が上がる制度のため、保険加入者になるべく事故を起こさないように注意させる効果があります。
保険加入者に一定の金額負担を求める「免責制度」なども防止手段のひとつですが、これは、モラルハザード防止には、加入者にもある程度のリスクを分担させることが有効であるという考えに基づいています。

また金融におけるモラルハザードとは、金融機関の経営者や預金者が、経営や資産運用等において自己規律を失うことをいいます。
公的資金の注入やペイオフの全面凍結、預金保険といったセーフティネットの存在により、過剰な貸出や無茶な投資が広がってモラルハザードに至るといった状態です。

近年、モラル・ハザードは、経済的・政治的あるいは社会的にも広く、規律の喪失や倫理観の欠如した状態を指すカタカナ語として使用されていますが、それは誤用であり、本来的な意味には倫理的・道徳的なことは含まれないという指摘もあります。